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厳しい残暑もあっという間に過ぎ、芸術の秋となりました。
秋と言えばコンクールですね。今年は新型コロナウィルスの影響で例年は少し違った形でコンクールが開催されているところもあります。
秋を迎えコンクールに向けて練習に励んでいる方も多いと思います。そこで今回はコンクールについて書きました。
さて、コンクールについて書くにあたり、経験豊かなピアノの先生方13名にお話を伺いましたことを踏まえて、そのお言葉をお借りしながら、長年指導してきて私が感じていることを綴ります。
はい。
先生方全員のお答えでした。
その理由として第一位は、『目標に向かっての努力を経験できる』。目標をつくり、そこから取り組みの第一歩を踏み出すだけでも素晴らしいことですよね。普段はなかなかできない曲を深く掘り下げて追求すること、数ヶ月先のゴールを設定し、それに向かって計画的に努力する力がついてくる。ピアノコンクールにだけに限らず、今後の受験などにも応用できるので、やり遂げる強さと生き抜く力にも繋がります。
目標を持たずに練習しているのとは違い、舞台で聴衆の前で演奏を披露することを前提に練習していると、心から真剣に取り組む姿勢ができ、その上発表会とも違うところでは、それを審査されて講評をいただくことで自信を得たり、弱点を見つけられたりもします。
コンクールにチャレンジする意味は、日頃経験することのない非日常の大舞台を踏むという経験をすることで、生徒様の中で何らかの足がかりになる可能性が高いといえるでしょう。
とにかく出演する人が楽しくなければ意味がない。先生方全員がそう感じていらっしゃる様です。
チャレンジできたことで意識改革ができ練習の取り組み方が変わったり、練習に対する意識が前向きに変化したり、上達のアップ、やる気の向上、力を出し切った後の笑顔が眩しかったこと。数え切れない素晴らしい事柄のお陰で幸せな気持ちにさせていただけていることに、先生方は感謝と感動をお持ちでした。賞をいただけた時には親御様も一緒に喜ばれ、そこには何よりご本人のご成長が結果として表われたとして、その中に技術や心のご成長も見られた時、その喜びは講師冥利に尽きるものでもあります。
そしていただけた賞を又次へのステップにして、その上のステージに進むための目標を定め、親子で一緒にピアノへの関わり方を学ぼうとされる姿勢は、他の出演者の皆さんの演奏も聴いてお勉強し、音色の美しさや表現の幅を広げる良い機会にもなるというわけです。
私の言葉としましては『結果重視にならないこと』。先ずはそこから始まります。
ここからは、12人の先生方が非常に素敵なお言葉を残して下さいましたので、重複分を省き、その全てを綴ります。
・とにかく音楽を楽しむように。
・勝敗だけを目標とせず、そこからスタートできる人になりましょう。
・今までの自分を越えてみよう。
・結果ではなく経過が大切。
・コンクールは同年代のお友達とも競う場でもありますが、演奏を自分の先生ではない先生に評価していただき、その結果受賞できなくても気にすることはなく、お友達が素晴らしい演奏であったというだけ。競う相手は自分自身であることに気付いて欲しい。
・これは大変貴重な経験であること。
・ご両親や周りの色んな人への感謝の気持ちを持って、それを伝えること。
・発表会とは違う緊張感、厳しさがあります。賞をもらえる人ともらえない人が必ず出る場である。上手く弾けても賞に繋がらなかったり、芸術なので解釈の違いや、審査員の好みによって変わっていきます。
これらのご意見からわかることは、目標に向かっての努力をした事実と過程が大切で、他の何よりもそこが一番重要という事ですね。完璧に演奏できたとしても、良い結果が出ないことも想定してチャレンジする必要もあります。コンクール出演をご本人が決心されたとき、指導者と親御様ともご一緒によく話し合い、何に向かっての努力なのか、誰のためなのか、何故そうしたいのか、たとえ3歳の幼児であったとしてもきちんと伝える様にして差し上げて欲しいです。
そこを理解して感謝の気持ちを持って挑んだとき、その人はそれまでの何十倍もの成長を遂げることとなるでしょう。
ピアノコンクールには、ブルグミュラーコンクール、バッハコンクール、音の夢コンクール、YPC(ヤマハピアノコンクール)等、他にも大小様々あります。
そこで先生方が感じられている必要な楽器ですが、9人の先生方がアップライトピアノだと答えられました。コンクールによっては電子ピアノでも可能かと考えられますが、ホールの後ろまで響かせられるタッチを作るには、やはり生ピアノが最適でありましょう。
コンクールでは一般的にはグランドピアノを使用します。例えば「ドレミファソラシド」を弾いてみた時、ドは強くてレは弱く、ミファは強くてソラシドは弱いなんてこと普通はありません。
でもタッチによってそんな風に聞こえてしまう事があり、その原因の一つとして電子ピアノとグランドピアノとのタッチの違いに即座に対応できず、指が勝手にそうなってしまうということになってしまう訳です。
私は幸せなことにも習い始め時に、アップライトピアノを両親に購入してもらいました。しかし成長していくにつれタッチや音質、音量のどれをとっても物足りなくなって行き、常に消化不良で欲求不満な毎日を過ごしたことを鮮明に覚えております。先生のお宅に伺ってレッスンを受けておりましたので、当然のごとくグランドピアノ。発表会でもグランドピアノ。自宅練習で完璧にしていったはずなのに、グランドピアノで弾くと思い通りに行かず、それが緊張にも繋がり失敗をも生み出すことにもなる。そんなことから両親は、音楽大学に行くならグランドピアノを買ってあげると言ってくれまして、めでたく自宅でもグランドピアノ練習が可能になりました。
アップライトピアノという生ピアノでの練習でも、そんな悩みを持つ時が来るので、電子ピアノではグランドピアノに太刀打ち出来ないのは当然です。お子様が一生懸命ピアノで音楽に取り組まれている場合、住宅事情が許す限り生ピアノのご購入をお勧めします。
今指導していただいている先生に、コンクール前になるとレッスンに通う回数が増えたりすることもあるでしょう。でも言われることは同じ、どうしたら良いかを聞きたいけれど尋ね方がわからない。先生に今更聞けない事もある。そんな時には、全く知らない先生のご指導を受けるのも一つの方法。
先生宅に伺うとなると大袈裟で、その覚悟も重いものにもなりがちですが、こんな風に弾いてみたけれども大丈夫なのか、どんな印象なのかをオンラインレッスンを受けて聞いてみると、自身では見つけられない注意点・姿勢・音楽的表現の間違いが発見できるかも知れません。
今の時期だからこそのオンラインレッスン活用は、必要だと感じた時にワンポイントレッスンとして取り入れますと、後でコンクールへの険しい道のりの助けになったと、きっと感じるに違いありません。それまで悩んでいた事への解決にも繋がることでしょう。
舞台を踏むという意味では回数をこなすと場慣れにもなりますし、練習する時間も増えて技術や表現力の向上もあり、そうしますと、もっと上達したいというモチベーションアップの良循環にもなります。学びの場でもあり、未来の自分育て、自身を表現する夢の時間であったり、ピアノという楽器の演奏能力を知ることもできる。
そんな生徒様の為に勉強をしたり、先生自身でも課題曲を練習して様々な解釈を考える時間も増えることで指導力の反省や、指導者としての信念を再認識できる良い機会でもあるのです。
コンクールは結果的に先生と生徒相互の、『心の成長がある』ことが一番
望ましい。