今回も浅井直子先生からお話を聞かせて頂きました。
浅井先生ご自身の経験と子育てから学んだことを書いて下さっています。
「子どもがなかなか自分から練習してくれない・・・」
「どう練習したらいいの?」
「練習を嫌がるけど、どうしたらいい?」
など、練習をさせるというのは難しいですよね。
そこで浅井先生が練習についての取り組み方を教えてくれますので是非お読みだくさい。
ピアノ講師の経験に加え、現在はヴァイオリニストでもある娘が子どもの頃の、子育ての経験も踏まえて“練習”について書かせて頂きます。
練習には色々な楽器、学習塾での勉強、スポーツに関しても全て相通ずるものがあります。
何度も繰り返し、徐々にできるようになる、覚えられるようになる過程を楽しみながらできるようにする為に、どうすれば良いのかという方法を考えることは、永遠のテーマでもあるでしょう。
子どもの生徒様のお母様にアンケートをお願いしました所、お家での練習について、悩まれていらっしゃる方が多く
・声を掛けなければ練習を始められない
・毎日、自らピアノに向かって欲しい
この2つが圧倒的に多く、9割を占めていました(2019年浅井音楽教室内の統計による)。この結果を見て色んなことが思い浮かびます。
我が子は自分じゃない。親の立場である人がそう考えると、少し客観的に子どもを見ることができるのではないでしょうか。「子どもが言うことをきかない」と感じるのは、支配下におきたい感情からであり、その前に自分はどうなのか?と、ワンクッション置いてみると、違う見方ができることも知っておくべきです。
パパやママご自身が、子供時代の事を振り返って、自分も親に言われる前に行動を起こしたかな?或いは何らかの習い事の練習をしたかな?
もうこれを考えてみるだけで、我が子への怒りや疑問が緩和されますよね。
我が家ではこんな働きかけも有効でした。「ママも練習が嫌いでね、お母さんに叱られたりして悲しかった時もあってね、その時には気付かなかったのだけれど、それは本当にママのことを考えてくれてたからなんだと、今になってわかるよ」という風に、その時のご自身のエピソードをお子様にお話しになりながら、共感を得る努力も必要です。
ピアノの蓋の上に物を置いたりしていませんか?
お子様が在宅中、ピアノの蓋は開けっ放しにするのも有効的な方法の一つ。
私の娘は子どもの頃練習の際によく、ヴァイオリンを出すのが面倒だと言っておりました。恐らくそれは多くの子どもにとっての本音であり、その気持ちを受け止めるべき。しかしさすがにヴァイオリンを出しっ放しにするのは様々な理由があって難しい所ですが、ピアノの蓋はある程度の時間なら影響はなく、返って開け放された状態だと遊び弾きでも触る機会が増えます。かんたんに、すぐに音を出せる状態にしてあげることは『弾きたい』の気持ちに繋がるチャンスかもしれませんので、可能であれば今すぐ試してみて頂きたい。
練習環境には他にもその種類があり、一番大切なのは生の演奏を聴くこと。これは私の音楽人生の経験からそれに勝る物はなし、と言い切る事ができます。生演奏で何が得られるのかといいますと
・その楽器の音の多彩さを知ることができる
・自身が出す音との違いに驚愕する
・その美しさや迫力に気持ちがわくわくする
・自分もあんな風に弾いてみたいと感じる
・もっと上手になりたいという意欲が湧く
感じ方は十人十色。他にも色々あるでしょうし何も感じない人もいますが、少なくとも今習っている楽器の演奏を聴いて何も感じない人は少ないでしょう。演奏家の生の息づかいも目にしながら素敵な音楽を身体で感じることにより、心震える感動を体験できたとしたら、その人は自身の音楽に対する気持ちの入れ方も変わることになります。
娘をオーケストラコンサートに連れて行った時、後ろにも持たれず前のめりになって、目をキラキラさせながら観ていた姿はずっと私の脳裏から離れません。現在は音楽学部在籍中で、オーケストラの中での演奏が心から楽しい様子。一人でも多く、このようなお子様が増えることを願うばかりです。
今年に入り、なかなか生演奏を聴きに、コンサート会場に足を運びにくい世の中になってしまっておりますが、機会を見つけて是非ともお子様に本物の素晴らしさを体験させてあげてください。
「先生にどんなことを教えてもらったの?どんなお話をしたの?何に気をつけて弾くと良いのかな?」等々、楽譜を広げて復習されたことはありますか?
『私は音楽やピアノのことは何も知らないから、楽譜を広げて見せてもらってもわかりません』と、こんなお声を聞くこともありますが、それは関係なく、お子様が頑張っていることに対して興味を持って一緒に考え、関心を持って一緒に楽しむことが重要なのです。
そこでお子様への声掛けの例をあげてみます。
新しい曲になりました。ではまず、前に弾いていた曲が仕上がったことを褒めてあげる。でもその曲もそれで終わりではないから
・時々弾いて聴かせてね。
・あなたがピアノを弾いてくれると幸せな気持ちになるよ。
こんな声をお父さんやお母さんに掛けてもらえたら、きっとお子様は嬉しくなることに間違いないでしょう。もし自分があの時、こんな風に言ってもらえていたらもっとやる気になれていたのに、と思えることを全部言ってみるとお子様は変わっていかれます。
そして次に始めようとしている曲がどんなものかを考える作業に入ります。
今はもうオンラインで、かんたんに様々なジャンルの音楽が聴ける時代。殆どの曲はYouTubeで聴けますので、一緒に聴いて感想やイメージを話すと、弾いてみたい気持ちになり、少し弾けるようになると今度は、もっと上手になりたいと思うようになるという良循環が生まれてくる。それが習慣になって、お風呂に入る・歯を磨く・ご飯を食べる、のような毎日欠かせないけれど、自然にやっていることと何ら変わりなくできる習慣として“練習”も、やらないと気持ち悪いと思えることへ導けるのが理想的です。
次に、褒め方についてのアドバイスになれば幸いです。
『上手になったね』
私はレッスンでも、殆どこの言葉は使いません。
最近ストリートピアノというものが街のあちらこちらに設置されておりますので、そこで弾いてみた演奏を通りすがりの人に「上手だね」と言ってもらうことがあったり、長年会っていない親戚のおじさんやおばさんに「しばらく会わないうちに上手になったね」と言われたり、それはそれで嬉しい言葉かも知れないですね。
しかしお子様もそれでは「どこが?何が上手になったの?」という疑問が出てくるに違いありませんので、ピンポイントで褒めることをお勧めします。
・ここのフレーズがきたとき、胸がキュンとなったわ
・この音を出してくれたとき感動したわ
前にも書きましたが、自分もこんな風に褒めて欲しかったことを全部言ってみると、お子様は変わっていきます。
私の母は厳しい人で、練習しなければ鬼のように怒っていましたので、怖いから練習するみたいな毎日でしたが、今となっては心から感謝しております。これと同じ様なことをヴァイオリニストの高嶋ちさ子さんが、テレビでおっしゃっていたのを観た時の内容がとても印象的でした。40歳過ぎてもお母様に「練習しなさい!」と言われており、その後お母様がお亡くなりになってからのインスタグラムでは、コンサートが近づいている頃『誰か鬼の形相で、練習しなさい!と言ってくれませんか?』と、書かれていました。母の存在が大きいという事の象徴のようですね。
練習がご両親の手に負えないときには、今の先生以外にセカンドオピニオンとしてオンラインレッスンや、動画添削レッスンを、今の時代だからこそ補助的に受けられるのも一つの方法として知っていただきたいのと、お家では厳しくするだけではなく、そして片手間でもなく『いつもあなたを見ていますよ』というオーラを出し続けると、お子様はその中に常に自分を見てくれているという愛情を感じられるので、一生懸命頑張れる力が湧くことに繋がります。